最近のいじめ事件に心を痛めてる一人です。たしか15年前頃も、いじめ事件が頻発しました。その当時受け持った学年のことが思い出されます。今のいじめ問題解決のヒントになればと思い、書くことにしました。
この絵は、この時の学年のサチコさんが卒業式当日に描き残してくれた10年後の私です。参ったなあ、ソックリです!
またアヤさんは、こんな手紙を書いてくれました。
「先生にはすごく大きなことを学ばせてもらいましたよ。しっかりと自分の意見を持つこと、権利には責任がついてくること、他にも社会に出て役に立つことが、いっぱいでした。すごく未熟だった私が、ここまで考えられるようになったのも先生のおかげでした。
昨日、先生が『アヤさんから、いつも元気をもらってたよ!』の言葉はうれしかったです。いつも迷惑ばかりかけてたお礼に、これからもずっと先生に元気をあげ続けます。(以下略)」
この子たち150人(4クラス)が、入学してきました。当時、この学校では、『全校1学年、学年1クラス』の方針を掲げていました。私たち1学年も、この方針で動き出しました。その中心は、学年集会でした。帰りの会の15分間というわずかな時間でも、学年集会を開きました。中身は、その時々のテーマでの話し合いです。教師の説教集会にはしませんでした。回を重ねるごとに、子どもたちは打ち解け、気楽に発言できるようになってきました。
これなら深刻なテーマでも話し合いができると判断した私たち教師は、いじめ問題の討論集会を開きました。
・・・いじめられてるなんて、言えないよ‼・・・
報道されたいじめ事件を資料にして活発な話し合いが始まりました。
そして、「いじめとは、いじめられてる人が、いじめと認めていれば、それはいじめである」などの確認がされました。
続いて、いじめられたらどうすればよいかの話し合いになりました。次々と手が上がり、
「いじめられてる人は、誰かに相談すればいい」という意見で終わりそうになりました。
私の横に座っていた、小柄なミノル君が、険しい顔つきでブツブツ言ってるのに気がつきました。つぶやきは「言えないよ、言えっこないよ」でした。私は、
「ミノル君、それ言いなよ。そうでないと相談すればいい でこの集会終わっちゃうよ。」
するとミノル君は、頭を下げたまま、ためらいがちに手をあげました。立ち上がった彼にみんなの視線が集まりました。シーンとして、彼が何を言うのか待ちました。
「みんなは、いじめられたら、友だちとか先生や親に相談すればいいなんて簡単に言ってるけど、相談できないんだよ!」
普段はおちゃらけのミノル君の迫力ある発言に、みんなは度肝を抜かれました。しばらくの間を置いてから、
「ミノル君に聞きたいんですけど、どうして誰にも相談できないんですか?教えてください。」
「・・・・・・」
ミノル君が、ゆっくりと立ち上がりました。
「みんなは簡単に、誰かに相談すればいいっていうけど、いじめられてる人の気持ち、考えたことあるんですか?人間は誰だってプライドを持ってる。だから自分はいじめられる、惨めな人間だなんて認めたくないんだよ。プライドが許さないよ。だからそう簡単にいじめられてるなんて、言えないんだよ‼」
ミノル君の迫力ある発言に、拍手が起こりました。別の子が、
「じゃあ周りの人はどうしたらいいんですか?」
「周りの人には、気づいてもらいたいんです。気づいて、どうしたの?って声掛けてくれればいい。そして周りの人に、気づいた人が相談してほしい。」
2時間を越える話し合いは、充実感をもって終わりました。
帰り際、隣りを歩く子に聞きました。
「集会、イヤじゃないかい?」
「ウウン、オレ集会好き!だっていろんな人の考えが知れるから。あの人の考えは、オレと同じとか、へえーあいつはあんな考えなんだとか分かって、みんなの中にいて安心できるから。」
間もなく1年が終わろうとする頃、子どもたちへの信頼を増した私たち教師は、思い切った提案を子どもたちにしました。
学年集会で、教師を代表した私が、
「この1年間、どんなことでも学年みんなで話し合ってきた。私たち先生の君たちへの信頼は厚い。もっと何かができると信じてます。
そこで、今まで君たちも、もちろん先生たちもやったことのない提案です。これから先生たちは来年のクラス編成をします。そこでみんなが賛成してくれたら、君たちのクラス案を作ってくれませんか?もちろん先生たちは、君たちの案も参考にします。」
提案は承認され、各クラス男女各一名のクラス編成委員が選ばれ、生徒の名前だけ書かれたカードで、クラス案が作られました。立ち会った私が驚くほど、150人全員の特徴を踏まえてのクラスが作られました。ある意味では、教師以上でした。
2年生の始業式の日。
正門前に新しいクラスを貼り出しました。いつもなら誰ちゃんと一緒と言っては笑い、誰ちゃんとは別クラスと言っては泣く派手な姿は見られませんでした。この学年の仲間とならどのクラスでも安心していられるとの確信が子どもたちの心に芽生えたようです。(つづく)
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