中学3年の2学期になると受験モードになります。悩みも多くなります。班に1冊づつ渡してある「交流ノート」は、生徒と私、生徒同士の交換日記です。
カズヒロ君は、
「頭の中では、私立高はどこ、県立はどこ、などと思っていても、学力は見合っているのか?自分の好きなことができるのか?お金の問題は?といろいろ頭に浮かび、不安でいっぱいです。」
するとセイジ君が、
「カズヒロ君のを読んで、ボクと同じだと思いました。ボクは、学力が低いために入れる高校が限られています。また自分のやりたいことが見つかってません。少し焦っています。あと、励まし合える友情やまとまりのあるクラスのことですが、一人一人が、自分のいいところを見つめ直し、他人のいいところも尊重し合い、他人のことを気遣うことが、まず大切なんだと思います。」
さらにミカさんは、
「みんなでこうやって、1冊のノートに自分の思ったことを書いてると、なんか落ち着くっていうか、なんかいいんだよね。カズやセイジのを読んで、やっぱり思ってることが一緒だから安心できるんだよね。」
と、交流ノートでの討論が続いていきます。
ある日、カヨさんが恋の悩みを書いてきました。いまつき合ってる人と同じ高校へ行きたいけど、親には反対されてる。どうしたらいいのだろうかというのです。次に書くはずのユースケからノートが出されません。掃除を一緒にしながら聞きました。
「1週間経ってもノートが提出されないけど、どうしたの?」
「ハイ、済みません。ボクには難しすぎて書けないんです。」
「そうか、いいんだよ書けなくて。『ボクには書けないので、次の人にお願いします』と書いて回しなよ。」
この悩みへの仲間の回答は、どうだったと思いますか?これはヒミツにしときましょ。
11月。ダイスケ君が、筆箱をイタズラされたり、オマエはうざいと言われて、とてもつらい毎日だ
と交流ノートに書いてきました。次々とダイスケ君を守る意見が書かれました。ついにいたずらしたタカシ君が、
「ボクはダイスケ君の気持ちを考えずに、今までとてもヒドイことをしていました。ボクがふざけてやったことで、ダイスケ君がこんなに傷ついているとは思ってもいませんでした。今までのことは反省してます。もうしません。そして仲良くしていきます。」
と書いてきて、仲直りしました。担任の私は、ノータッチでした。生徒の力で解決しました。
卒業式の日、5班の交流ノートの最後は、こう締めくくられていました。
「最初、ハッキリ言って、このクラスじゃヤダなって思ってた。
でも、今はこのクラスじゃナイとヤダ‼ from 智恵子」
子どもたちは、初めはクラスを越えて学年で行動しました。その頂点が修学旅行でした。2学期、受験体制に入ると、子どもたちはクラスに帰っていきました。クラスが居場所となったのです。悩みを共有し、仲間の声援を受けて、それぞれに受験を突破していきました。(つづく)
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