2013年12月19日木曜日

130才物語 4 それでお客さん来てくれる?

山歩開店を前にして健夫さんと妙子さん夫婦が連日もめてるんですよ。普段は大人しい妙子さんが、自分の考えを主張するなんて珍しいので、私はドギマギしたね。離婚しちゃうかも、なんてこともアタマじゃなかった屋根をよぎったね。心配だったねえ、エッ、どんな対立があったのかって?じゃあ憶えてる範囲で話すよ。私も130才にもなったから物忘れがひどくてね。ま、聴いておくれ。

「ようやく開店のメドがついたから、お店の案内ハガキでも出さなくちゃね。」と健夫さんが言うと、

「なるべく宣伝したくないの!」と妙子さんが意を決した様子で言うのよ。すると、

「まさか?オレの教員時代の知り合いにも知らせたいなあ。」

「知らせなくていいの!」

「エーッ、それじゃあ・・・」

「私は、ひっそりと開店したいの。派手にやりたくないの、分かって!」

「う、うーん・・・」

それからね、こんなこともあったなあ。

「家はわかりにくいから、入り口に大きな看板ぐらい出そうよ」と健夫さんが言うと、

「出さない!」

「エーッ、看板も出さないの⁉お客さん迷っちゃうよ。」

「それでもいいの。まずは家を知ってる人が来ればいいし、一度来れば覚えるからダイジョウブよ‼」

「それじゃさあ、開店祝いは多くの人を呼んでやるんだろ?」

「やらない!」

「ジェジェジェ!やらないの!どうして?」

「私たちはお店に慣れてないシロウトなのよ。それなのに最初から多勢のお客さんを相手にしてごらん、メチャメチャよ。イヤな思いをしたお客様は、二度と来てくれないわ。だから始めは少ないお客様でいいの。お客様が来ない日があっていいの。貴方は派手好きだけど、私は派手はキライなの。」

健夫さんは、自分の考えがことごとく潰されてショックだったみたい。でも考え直したようだよ。

「この店は、女性の女性による女性のためのお店なんだ(アレッ、どっかで聞いたセリフだなあ)。だから妙子が考えた通りに事を進めればいい。オレは妙子を陰で支える黒子に徹すればいいのだ。」

と、言い聞かせていたもんだ。健夫さんは、数多くの知人がいるけど誰にも知らせなかったよ。辛かったと思うけど、エライ!自分の考えを貫いた店づくりをした妙子さんは、もっとエライ‼

開店から半年間くらいは毎日数人しか来なかった。それがクチコミで知られ始めてから徐々に増えていったね。これでよかったね、スムーズに運べたのだから。

でもね、道に迷うお客さんが続出したね。家の周囲を堂々巡りしてるので、近所の人が店まで案内してくれるのも度々だったなあ。それで看板を出したみたいだよ、それも小さい看板を・・・こだわりの人だねえ妙子さんは。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿