2012年5月11日金曜日

山菜摘み、いざ新潟へ・3

 

正面の雲の中に隠れているのが大源太山(1598m)

 

思い出の山の一つに、越後湯沢の奥にある大源太山(1598m)があります。今回の旅で泊まった宿から見える筈だったのですが、恥ずかしいのか雲隠れしてしまいました。イヤ、実は私こそ話すのも恥ずかしい体験なのですが・・・・・ナイショですよ。

あれは私が24才、社会人2年目の年でした。大学のワンゲル仲間4人と私の彼女(20才)の5人で、大源太山登山をしました。登山口に車を置いて、沢伝いの登山です。遅くも午後の3時には、車まで下りて来れるから、荷物はなるべく軽くしようとなって、懐中電灯やら雨具などを車内に置いて、身も心も、そしてリュックまでも軽くして、沢登りを始めました。

はじめは沢筋も広く、傾斜も緩やかなので、足取り軽く、鼻歌交じりで登れました。しかし・・・

やがて谷は狭く、滝の連続。足場が悪く、腕の力で登るところも出てきました。彼女を見ると、崖の途中で身動き取れない状態。すかさず私は、頭を彼女のお尻に当てて、グイッともちあげます。これを繰り返しながら、少しづつ高度をあげていきます。時間だけが速く過ぎて行きます。午後3時!まだ谷の途中! やっと頂上、9月末の冷たい月が浮かんでいます。

「月明かりを頼りに下山するしかない」と開き直り、下山開始!しかし、森林帯に入ると、月明は届かず、いつしか雨が。

全員、腰を下ろして、地べたを手で探りながら歩く。全てを手に集中するも、道に迷う。ビバーク(野宿)を決意。幸いにも、雪の重みで水平に張り出した木があったので、5人は一列に木を跨ぐ。一番後ろに私。雨具はたった一枚のポンチョだけ。それを全員で頭にかぶる。私の背中を雨だれが流れ落ちる。寒い!震えがくる。すると震えは全員に伝わり、私がブルブル、みんなもブルブル。おかしみが込み上げ、笑いが起こる。

「ありゃ?私の古ズボン、内側の右の縫い目がほつれ始めてる。糸と針は?無い。あっても真っ暗だ!」

「ああ、どうしょう?右脚を、雨が!冷テーッ!」ブルブル。みんなもブルブル。

眠気覚ましには、歌。繰り返し歌ったのは、♬街のどこかに、寂しがりや・・・・♬

5人の歌声が、標高1000mの森の中に吸い込まれていく。遠くに見えるのは、越後湯沢の街の灯りか。

周りがほの白くなり、木々の影もくっきりとしてきた。行動開始。一夜の宿を提供してくれた無名の木に、感謝!下山するうちに、私の愛する古ズボンは、左側の縫い目もほつれ始めてる。ヤバイなあ。持ち主の気持ちなんかお構いなしに、古ズボンの野郎は、全部の縫い目をほどいてしまった。古ズボン変じて、一枚のの布切れ状態。

「シマッタア、もうヤケだ。両脚丸出し、土に汚れたパンツ丸見え、見たけりゃ見ろってんだ!」帰りの車中、ズボンを履き替えたかどうかは、丸忘れ。「オーイ、仲間たち、オレどうしたっけ?」

このビバーク事件以後、山道具と食料を車内に置いていくなんて、やめました!今回の旅だって、ヘッドランプにラジオ、そして途中で買った「桜アンパン(5個入り)」を持っています。

あの時の彼女ですか?あの時の彼女の脇には、今も私がヤモリの如く引っ付いてます、40余年も飽きずに!

いまですか?今じゃあ、彼女は山歩のオーナーシェフ!わたしゃあ、山歩のセンギョウシュフ!?

私の頭ですか?私の頭も、大源太登山以来、彼女の尻の下に敷かれっぱなしです、ハイ。(おしまい)

 

 

 

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