2014年2月21日金曜日

オフクロ 4 オレを産んで初めての出会いだなあ⁉︎

近くの老健施設に入所している母を妻と二人で見舞いました。

母は、私を見るなり、

「健夫さん、来てくれたのかあ。久し振りだなあ!」

と目を潤ませてます。

「ホント久し振りだよ。お袋がオレを産んでから、会うのは初めてだから、60数年ぶりだねえ。」

と、私が茶化すと涙とヨダレを吹き出して笑いこけてます。会う度に繰り返される漫才です。

母の茶飲み場です。母の親しかった茶飲み友達も、今はいません。母の話の殆どが昔のことです。「Aさんは、元気かい?」「Bさんは、今どうしてるんだい?」と聞かれても、「もうあの世の人だよ」とは言えません。母が悲しむからです。ここも使われることがなくなりました。

そういえば、こんなこともありましたっけ。

母が50代の頃でしょうか、カラオケを習っていました。ある日、母の歌を吹き込んだテープを聞いていると、途中にプッという音が入っているのです。

「なんだい健夫、オナラの音も録音されちゃうのかい?知らなかったよ。てっきり歌しか録音されないのかと思ってたよ。アーハハ!」

それ以来テープレコーダーは、お尻の側に置かなくなりました。

ひとしきり昔の話で盛り上がったところで、妻が、

「おばあちゃん、もうじき誕生日だけど、何才になるの?」

「そうさなあ、80ぐらいかな?」

「おばあちゃんは、今年90才になるの。」

「ヒエーッ!そんなになるんかい?」と、自分の年齢に目を白黒させてます。

「誕生祝いを自宅でやるから、何を食べたい?」

「そうさなあ、ほうれん草の胡麻和えとエビ大根の煮付けが食いたいなあ。」

「わかったわ。じゃあそれも作るからね。」

帰り際、

「ところでケーコ(私の妹)は、ちっとも来てくれないから、来るように健夫からもお願いして!」

「わかった、オレからもよーく言うよ。せめて10年に1回くらいは、会いに来いってね。」

すると母は、顔をクシャクシャにして笑っています。

別れ際の、いつもの会話です。ケーコも会いに来てるのですが、母は覚えていません。無性に娘に会いたくなるのです。

 

1 件のコメント:

  1. トンチンカンで楽しくてやがて悲しい年老いた親との会話
    104歳で亡くなった母とのやり取りを思い出します
    「また来たの~」と言われるくらい顔をみせてあげてくださいね~
    遠く離れた故郷にいる母に果たせなかった事でした

    返信削除