2016年6月29日水曜日

私のダメ教師ぶり(619話)

前号の続き。
ある日のこと、授業が終わった途端、一人の生徒が真剣な顔で私のところに来た・・・


       

「先生、話があるんです!」
「なーに?」
「先生、先生の話はウソなのかホントなのか、僕には分かりません!だからこれからはウソかホントか分かるように話してください。そうでないとアタマが混乱しちゃうんです。」
「そうだったのか!ゴメンな。これからはウソとホントが分かるように努力するよ。正直に言ってくれてアリガトウ。」
生徒はニッコリして、その場を離れた。
さあそれから私は考え込んでしまった。中学1年の1学期では、どのように話せばいいのか手探り状態だった。そしてその日がやってきた。
「地理で地球上のことを勉強する前に、この太陽系の惑星のコトをおさらいしよう。君たちも知っての通り太陽に一番近い星は?」
「水星‼︎」
「その通り!さあ続けて言ってごらん」
生徒が冥王星(今は惑星でない)まで元気に言い終えたところで、
「最近、惑星がもう一つ発見された!誰か知ってる人!」
誰も手を上げない。真剣に考えてる。
「そうか、知らなくて当然だよ。つい昨日発表されたばかりだからね。その星の名前はね、オット星、オットセイって言うんだよ」
クラスの半分くらいは信じている。他は半信半疑状態。続いてトドメのジョーク一発。
「そうそう、それからね、新しい星座も発見されたんだよ。その星座の名前はね、ギョウ座と言うんだよ。」
すると半分以上の生徒の顔が笑ってる。吹き出すのをこらえてる。私はだめ押しをする。
「いいかい?ギョウザ・・・ギョウ座・・・餃子・・・」
と、3回繰り返したところで全員爆笑となった。
しかし、
入学したての生徒にもっともらしいウソを連発したせいで、生徒はいつも疑い深い目で私を見るようになってしまった。
だから私は、
「これから話すことはホントのことだから、聞いてくれな!」
とお願いするようになった。すると生徒は、
「じゃあ、先生の話、聞いてやっか」
「そうかいアリガトウ」
いつしか私の話を聞いていただく有難い生徒になっていた。

教師生活最後の3年間は、生徒のそばにいて見守るだけだった。いやその逆で、生徒が私を見守ってくれていた・・・・・

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