2013年3月5日火曜日

オフクロ 1・ ハト追う爺さん

昭和の初め頃は、稲刈り・脱穀が終わると、もう師走。枯れた田面を木枯らしが通り過ぎていきます。

「アレッ、あの鳩爺さんのヨシズから、タバコの煙が漏れてるよ。今日の風は西風だあね。よく飽きもせず毎日、鳩捕まえるよな。」

「じいちゃん!お茶持って来たよ!」

「ビックリするじゃないか。なんだおチヨか。ホレ見ろ、鳩が逃げちゃったじゃないか!しょうがねえアマだ。」

「ゴメンな爺ちゃん。鳩取り、続けて」

「まっ、おチヨじゃ勘弁すんべ。」

陽が西に傾き始めた頃、鳩爺さんは、捕まえた鳩をぶら下げて家路に着きました。鳩爺さんの家には、おチヨちゃんが、醤油を持って待ってました。

早速、鳩の解体が始まります。羽根をむしり、皮を剥ぎ、肉と骨を取り分けます。骨も出刃包丁で細かく砕き、醤油と混ぜて団子にします。こうしてゴボウと鳩肉の鳥鍋のできあがりです。

鳩爺さんは、隣りに住むおチヨちゃんが、大好きです。

「おチヨ!何たって鳩の肉が、一番うまいんだぞ。おチヨも食べな。」

それから80年!私を産んだ母は語ります。

「鳩爺さんは、お金持ちだから、若い時から働かないで遊んでばかり。冬じゅう鳩取りだから、村でも評判の人だったんだよ。遊んでばかりの男は、他にもいたなあ。だいたい男はグータラなんだよ。昔はそんな男ばっかり。」

いやいや昔の人は、今より人間臭かったのかも・・・・・

 

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