2016年1月14日木曜日

母の引越し (557話)

l「なんで、ここ(老健施設)を出なきゃなんないの?今まで黙ってて、急にここを出るだなんてアンマリだよ!」
「・・・・・今まで黙ってたのは悪かったなあ。でもな法律で、これ以上はいられないんだよ。」
「ここで皆んなと仲良く居られたのに、それなのに・・・」
母は事情が飲み込めないまま、大粒の涙を流し続けていた。施設の人に見送られ、近くの特養施設に入居した。


       

特養施設に着いてからも、同じことを繰り返し、私をなじった。切なかった。
その後、母の私物を届けに行った妻が、その後の母の様子を話してくれた。
「お婆ちゃん、元気だったわよ。私にこう言うのよ。『私は何処だって、皆んなと明るく、仲良くできるんだから、心配しなくて大丈夫だよ!』って。だから私は、お婆ちゃんすごいねえ、よかったわあって言ったの。もう皆んなと楽しげに話してたわよ。心配ないわよ。」
「あんなに泣いていたのに・・・」
「もう長年ここにいるかのように振る舞っていたわよ」
「そうかあ、オフクロの適応力は、スゴイなあ!」
「そうよ、もう大丈夫よ。」

一番心配だったことが、母の適応力で簡単に乗り越えられた。
安心すると同時に、どっと疲れが出た1日だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿